2010年8月26日木曜日

濃い昼休み

 
ヘビーデュティーな服の縫製の職に就いたら、面白かろう。

ある日の昼休み、就職相談担当の「俺の東レ」の先生()が、「自衛隊(で使っている服)の素材は東レ」などと仰っていたので、私は「どこで作っているんですか?」とお伺いすると、先生は言葉を濁された。
話が中途半端で終わり、気持ちが悪かったので、その日の夜にネットで検索していると、自衛隊の制服の縫製は事業仕分けで海外委託となったなどと、幾つかのブログで拝見した。(

その中に、国内制服縫製 かつての同和対策事業の一部IR加工した布はクラボウとユニチカ。ケプラーは東レ。何れもゼンセン同盟の有力組合などの書き込みを見て、実際どうなのか、真偽を確かめるべく、翌日再び昼休みに「俺の東レ」の先生を呼び出してお伺いしてみた。

官公庁の、特に防衛省や警察庁や海上保安庁のヘビーデュティーな制服となると、アパレルでも特殊な分野ということで、先生も詳細までは掴んでいらっしゃらなかった、というのが本当のところらしい。先生は「恐らく、こうだろう…」というお話しかされなかった。
先生は、事業仕分け云々のことはご存知でなく、そうでなくても「あれは中国で縫製しているんじゃないか」と。まぁ、素材を生産している工場がある国で作ると普通に考えられたのだろう。

その上で、自衛隊で着用する制服などは国家機密のうちに入らないであろう、と。本当に国家機密になるような類のものこそ、国内、ないし米帝で作られているか、またそれがどこで作られているかというような情報こそ、機密であるが故にこちらまでは流れてはこない。などと仰られた。

「もしもそれを調べるとしたら、省庁に電話してみるとか。でも、教えてくれるかなぁ。…」

今軽く検索してみると、例えば防弾チョッキを作っている会社は日本ユニ、そして先生の東レも出てきた。どれも「米国規格」となっている。防弾・防刃チョッキぐらいは機密にはあたらないのだろう。それがどこで作られているのか、マニアの間でならその製造工場は有名なのかもしれないが、深く検索してみないとちょっとよくわからない。検索してもわからないかもしれない。

そうして、先生との話は『女工哀史』にまで及んだ。

「懐かしいな。俺がそれを読んだのは、もう四十年前になるかな」

と、紡績の組合と同和の関わりについて、先生は「それは別個の扱いだ」と仰る。つまり、部落解放同盟などという集団との関わりではなく、労働組合の労働者という中での関わりのことだろう、と説明された。先生自身も管理職になる前は組合員だった。
腑に落ちるような、それでいて狐につままれたような。
切っても切っても切れないもの、それは水。しかし血は水よりも濃い。などと、利権や既得権益は割り切れぬものがある。

しかし、『女工哀史』の時代と、一体何が変わったのだろう。繊維産業は場所を、国を移して『女工哀史』を繰り返す産業である。
明治時代の繊維産業の隆盛をきっかけに、日本は経済大国に上り詰め、そして韓国、香港、中国、トルコ、タイ、カンボジア、ベトナム、バングラデシュ…、次の時代はアフリカ、などと。
「クール・ジャパン」などと、日本がどれだけ優れたデザイン力を誇ろうが、それも近年中に中国が追いついている。
僅かに、素材の加工に優れた技術を持つ会社が、海外の工場で隆盛するかもしれないが、かつてのように国内で多くの雇用を生み出す産業ではない。
縮小し淘汰されていく今の日本のアパレルの、手作りだのものづくりだのといったプライドは、吉原の花魁のようなプライドなのだと、私は思った。(
 

 

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