2011年2月9日水曜日

制服の縫製工場の見学に

 

電車に乗り、天下の分け目の関ヶ原で、虹を見た。これは幸先良い。
今日は、引率の先生に連れられて、官公庁の制服の縫製工場の見学に行ってきた。

以前、Twitterでアタマから「見学は無理」などと言われた官公庁の制服の縫製工場()だが、偶然ハローワークに求人票が出ているのを見て、ダメもとで見学の希望を申し出ると、意外にもあっさりOKが出た。無理どころか「どうぞご覧になって、勉強していって下さい」と、大いにウェルカム。今後、後に続く訓練性たちの中からも、この縫製工場と縁があるかもしれぬと、先生ともども挨拶をかねて伺うことになり、私はまたとない機会に恵まれた。

そうして社長さん自らが応対に出て下さり、惜しみなく現場を、お話をお伺いさせていただいた。

自衛隊の制服は無事日本で縫製されていた。
「事業仕訳で仕訳されるぞー」
という情報は、仕訳される一ヶ月前から既に制服の縫製の筋で周知されていたそうな。そして、「そんなもんを他所の国に出せるか!」と。
カミナリオヤジ風だが、無駄なく、しかしざっくばらんに大いに語られる、人間味に溢れた社長さんだった。

その縫製工場は、終戦後しばらくの創業当時は、普通の婦人服などを扱っていたところ、ひょんなことから、官公庁から学校から掃除のオバちゃんの仕事着から、様々な制服を手掛けるようになったとか。もちろん、子どもの「一日署長さん」とか「一日駅長さん」などの制服も手掛けられるそうである。
「ディズニーのも縫うたぞ。あれは大変だった」
恐らく、ディズニーランドで働く人の制服か、パレードの鼓笛隊の着ている服だろうかと思う。

私はできればヘビーデューティーな、あるいはコンサバティブなものが縫えるようになると凄いだろうな、という思いがあって、この度の見学の機会に至ったのだが、納品先の厳しい検査で、完成品の布地の微妙な色合いの誤差を指摘され、その指摘の受け答えをしていると、「縫製工場は布地屋じゃないのだから口出しをするな」と言われたとか、大量に納品したあとに、針目の飛びを指摘され、大量に返品…などと、伺っていると気の遠くなるような苦労話が尽きない。本当に、本当に大変な業界なのだと痛感した。

返品のクレームで一番多いのは、袖丈の長い短いであるとか。
また例えば警察の制服など、全国皆同じかというとそうではないらしく、それぞれ県警ごとに微妙にディテールが異なるのだとか。どこそこの県警は、手錠を入れるポケットがここで、また別の県警は、ズボンの靴擦れの箇所に暗闇でも分かりやすいように反射板が付けてある…等々。

そしてこの工場では、もう二十年以上前から、中国からの研修生を受け入れてこられたそうだ。このあたり、けっこうセンシティブな事柄かと思うが、大いにお国柄の文化的な違い等についてもお話を伺った。

「あっちはピーチクパーチク、作業中におしゃべりがうるさいんだよ」

外国人研修制度は廃止され、現在は中国からの縫製工も日本人と同等の労働者の扱いだと仰っておられた。
社長さん自らが、現地の縫製の学校の生徒さんを現地で面接なさるそうだが、その選考方法が厳しい。
ジャケット一枚ぶら下げて、「これ一時間で縫って」。そうして15分間それを眺めさせて、あらかじめ裁断のしてあるジャケットのパーツを、早い人なら40分、遅くても1時間20分ぐらいで仕上げてくるという。その名の通りの熟練工。現時点でジャケットのパターンを引いている、未熟な途上の私には、想像もつかない早さである。

現場は社長さん自ら直々で案内して下さったのだが、私が驚いたのは、「あれがどこにあって、あれはどこから注文がきたやつで…」と、社長さんが現場のどこに何があるか、これが何であるか、これがどの工程のものかを、くまなく熟知しておられたこと。
転職回数が30回近い私なのだが、経営者といえば雲の上の顔もわからぬ人であることが常だったので、末端の従業員の仕事内容の詳細をここまで把握できているということは、それだけ従業員ともコミュニケーションがとれているということなのだ。前述の三島由紀夫の『絹と明察』()の世界ではまったくない、実はそれは、私の経験上では稀有なこと。しかし、

「中小企業の経営者だと、今日の社長のように、現場を把握している人が多いから、実はそうめずらしくはないですよ」

と、引率で来られた就職相談担当の先生は、そう仰っておられた。

本当に勉強になった。
実はまだまだ本当に深いお話をたくさん伺ったのだが、それを文章に起こすだけの力が、私にあるかどうか。
しかしこれら、私がこの社長さんから伺ったお話は、きっと機密事項なんだ、と思いつつ、私は一体どこまで口をつぐめばいいのだろう…、などとボソっと言うと、社長さん曰く「後ろめたいことも何もないのだから、今話しているようなことは、人に話してもらっても全くかまわない」とのことだった。
 

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